2.26事件と父と歩兵第一連隊
●父は歩兵第一連隊に入営
昨日は2.26事件の日であった。父に2.26事件の記憶を聞いたことがある。当時、父は13歳。野次馬として山王下で決起部隊を見ている。 歩兵第一連隊は、乃木坂と六本木の途中にある現在の防衛庁の所にあった。2.26事件に参加したのは、その他に、歩兵第三連隊と近衛第三連隊。歩兵第三連隊は第一連帯の向かい側にあった。今は、国立新美術館ある。近衛第三連隊は、現在のTBSの所である。
父は後に、徴兵検査甲種合格で、決起部隊だった歩兵第一連隊に入隊する。父は入隊した時に四谷に住んでいた。入隊までの経路は、四谷から市電で山王下に下車。山王下から乃木神社に向かって坂道を登って行った。母が同道した。山王下から乃木神社までは歩いて10分程度、右手に近衛第三連隊を見て、母と息子は坂を登ったのであろう。坂を登りきったところが乃木神社。左手に曲がり約5分で歩兵第一連隊に着く。父は乃木神社の所で母と別れる。この時、父は母の顔を見て、これが見納めと思ったそうだ。
●父の入隊した道を歩き感じたこと
私は、父が入隊した経路を歩いたことがある。同じ道を歩きながら、父と母の気持ちを体験した。当時と風景は違うだろうが、10分間の父と母の気持ちを思うと切なくなった。
その後、父は2週間後に下関から朝鮮を経て北支、満州、国後と転戦。昭和20年8月9日に転属命令を受けるために、青森県の小湊に着いた。転属命令が出る前に敗戦を迎え生きて帰ってくる。
8月9日はソ連参戦の日。8月15日は敗戦の日。共に父は、地獄に遭わずに生き延びた。
ついている男であった。2.26事件を書くつもりが、父の話になってしまった。