歌舞伎の見得を切るようにこの場面でこのプレーをする選手は格好良い
今夜は“見得を切るようなプレー”についての「だからどうなの話し」。
歌舞伎や文楽で役者が見得を切る。見得を切る場面は決まっている。例えば「勧進帳」のラスト。
弁慶が安宅の関の通行を見過ごしてくれた富樫左衛門に深々と頭を下げて感謝の礼をする見得から飛び六法を踏んで義経一行を追う仕種は、どんな役者が演じても、その見得と六法の足取りは同じだ。
歌舞伎や文楽の魅力は筋書きが決まっていて、同じ見得、同じ仕種の繰り返しを見て心良い気分に浸れることだと思う。
一方、野球は歌舞伎や文楽と違って筋書きが決まっていないドラマだという。
そんなことはないと思っている。
野球も歌舞伎と同じように決まった場面で決まったプレーをする選手がいる。
それは歌舞伎や文楽の見得を切ると同じだと私は思っている。
2015年7月2日ヤクルト対阪神戦は8回を終了して10対1とヤクルトがリードしていた。もう勝負は決まっている。
9回表、阪神の鳥谷敬遊撃手が打席に立った。
友人と「さあ、鳥谷選手は初球をレフト方向に飛球を上げるぞ」と共に宣言した。
120%負けが確実。初球、レフト方向飛球。
これは鳥谷選手の「はい今日はこれでおしまい」という試合終了幕引き見得なのだ。
今日も、そうやってくれました。鳥谷選手は初球レフトフライしたのです。
「はいおわりました」と観客に見得を切ったのだ。この見得、いつも感心して見ている。
鳥谷選手のこの見得、実に格好が良い。何かうれしくなる。
勝負以外にこんな場面でこういうプレーをする。それを発見して、予言する。
そんな楽しみを教えてくれた鳥谷選手に久しぶりに球場でビールを飲んで感謝、感激。
というわけで、今夜もだからどうなの話し。